第11回感性認知ビジネス実践部会を開催
日本感性工学会
第11回感性認知ビジネス実践部会 議事録
日 時:2008年12月 8日 15:30~18:00
場 所:東京国際フォーラム G棟508会議室 出席者:部会員70名中12名
1.部会長からの報告
1)日本感性工学会の近況
・日本感性工学会大会が9月に開催されたが、過去最高の発表件数であった。
ただし、学会員数は伸び悩んでいるため、このままだと現在くらいの規模でまとまってしまう可能性もある。そこで是非とも主旨の合うご友人を誘って頂きたい。
また今後は当部会からの発表も増やしていきたい。
・まもなく台湾の感性工学会が立ち上がるが、このようにアジアの関心は高い。また2010年には、日本主催の大会をヨーロッパで行う予定となっている。
2)Society for Neuroscience2008の報告
・およそ35,000人が参加する大会であり、日本からは茂木健一郎さんも参加していた。脳科学は学問の集約的ポイントとなっている。
日本では脳科学と他の学問が分断されている感があるが、海外ではそうではなく、さまざまな学問と密接に関連しているようである。
・そのような中、部会長は「認知と行動」のテーマ中の「ディシジョン・メイキング(意思決定)」の中の「ニューロ・エコノミクス(神経経済学)」のセッションで発表を行ったが、エコノミストの研究発表はほとんどなく、理論のモデル化と、実際のビジネス現場実験における人の行動データがあることにより、高い関心を得ることが出来た。
・ディシジョン・メイキングという分野は今、非常に関心が高まっている
・ニューロ・エコノミクスセッションの日本からの発表者は、部会長と京都大学を中心とした研究チーム(値決め時に脳で何が起こっているのか、をfMRIで見ていく、というような研究)の2件であった。
・AではなくBを選んだ場合、脳のどこが活性化しているか、ということを見ることができる方法も出てきている(例:fMRI)
・所感としては、人間の感性に着目してビジネスを考えていくことは、決して横道にそれているわけではなく、今後主流になっていく、ということである。
それから、感性工学と脳科学はかなり密接しているので、部会員も今後は着目しておかれると良いと感じた。
・次年度もシカゴで開催されるが、参加する予定である。
2.ディスカッション:感性から見て、今、本当に不況なのか?
1)ディスカッション
・田中副部会長:当社のクライアントの動物病院の売上は下がっているようであるが、弊社の売上は伸び悩んでいるものの下がってはいない。
その理由として、お客さんとの関係性構築を大切にしているからだと考えている。これは雑談と関係性が比例する、という仮説のもとに行っている。この不況下においては、同業他社が元気がなくなってくるのに対し、弊社は方向性が見えているため、他に選択肢がないことがプラスに寄与しているようである。
・村松:雑談が出来ることにより、客数はアップする。さらに相手の困っていることを引っ張り出せる雑談をすることで、客単価アップにもつながるのではないか、と感じる。
・立川さん:雑談の効果として、第一に不安を言い出しやすくなることがある。そして次に、相手の変化を起こさせるかどうか、というところにあるのではないかと思った。
・田中副部会長:訊く、質問、聴く、で成約率は上がるが、コミュニケーションのステップで進めていくと、ある段階で突然ブレイクし、売り込んで欲しい、というムードに変わることがある。
・立川さん:最初から突っ込んだ質問をするのでなく、様子を見ているうちは待ってあげる。
・柴山さん:こういう不況下の中で、これまでの話がより強調されていく、ということではないだろうか。
・小阪部会長:柴山さんの業界(防犯)としては不況の影響はどうでしょう?
・柴山さん:これまでは「儲かるから」という理由でセミナーに来ていた住宅屋さんが、こうなると経費節約のために来なくなる。逆にやる気のある人は差別化の突破口だと来続ける。
・田中副部会長:ワクワク系は儲かる、という視点で見るとカッタルくなるのではないか。
・柴山さん:ブログを書き続けている建築屋さんの例であるが、知らないうちにお客さんが見てくれていて先の田中部会長のステップがアップする、ということがある。
・亀田さん:現在は不況だと思う。必要の無いものは絞っていく、という状態なので、私の所属するオートバイ業界も大変である。ただ私のところは伸び悩んではいるものの、そこまでの状況にはなっていない。
・小阪部会長:買い控えるものの上位ランキングとしては、男性は車・バイク、女性は外食だとの最新の調査結果がある。しかし、高級キャンピングカーを売っているワクワク系の会員さんのところの売上高は落ちていないそうである。
・田中副部会長:ホノルルマラソンの参加者は業績が苦しいにも関わらず、増えている。ということは「不況でも需要は作れる」ということが言えるのではないだろうか。
・大村さん:BtoBで、関係性が作れない企業が苦戦しているのだということが分かった。
・小阪部会長:太田区の町工場の事情を聞くと、昨対比10分の1という大変な状況になっているところもある。たとえば受身で発注を待っていたようなマーケティングをやらなくても売上が上がっていた会社や、マーケティングがあまり通用しない産業構造の中で仕事をしている会社がここで打撃を受けている、という風にも考えられる。
・柴山さん:市場が縮小していく場合(たとえば炭鉱)、関係性を築いていても苦しくなる、という側面もある。
・渥美さん:確かにBtoBだと関係作りは難しいかもしれないが、社内のスタッフ同士の関係性を作っていくことで乗り切っていく、という考え方もありではないだろうか。つまり、社員の感性が試される時ではないかと思う。
・柴山さん:現場の人がやれるだけではなく、トップと社員が感性がそろっていなければ、無理が出てくると考えられる。
・田中副部会長:会社の文化をいかに創っていくか、がテーマといえる。これが出来ているところが不況ではない、といって良いのではないか、と思う。弊社でも先のステップなどを社員が勉強して自ら発案するようになってきた。そのキッカケは社員に任せたことである。
2)まとめ
・小阪部会長:今回のようなディスカッションを濃縮することで、大会での発表材料にもなり得るのではないか。
こうしたディスカッションはこの部会ならではのものなので、たとえばシンポジウム形式にして、学術界の方を交えて行うことも視野に入れて良さそうである。
今年は今回が最後であるが、次回以降、他の部会員も参加して欲しいものである。
・田中副部会長:今回のディスカッションを行うことで、自分たちのやっていることの確認ができて有意義だったと感じた。次回は3月頃開催予定である。
議事録作成者 村松 達夫